Interview vol.8
田渡凌×竹下雄真

「上手い」からではなく、
「うまくなりたい」からアメリカに行く。
常に、挑戦する気持ちです。

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田渡凌(たわたり・りょう):生年月日:1993年6月29日。180cm。
名門・京北高校のエースとして1年生から活躍。U16日本代表、U18日本代表にも選出された将来の日本を担う選手。新天地はボストンにあるプレップスクール「TILTON SCHOOL」で英語とバスケを学び、NCAA Div1を狙う。兄・修人は今シーズンよりリンク栃木と契約。また、実父は京北高校のヘッドコーチでもあるバスケ一家。

――― お二人の出会いのきっかけは?

竹下雄真(以下:竹下)
「『世界で戦えるアスリート』の発掘・育成に取り組んでいるとき、先輩の紹介で、監督でもある田渡選手のお父さんを通じて、彼に会ったのが最初です。
高校バスケットボール界のスーパースターの彼が卒業し、アメリカの大学にチャレンジする。彼は、アメリカの四大スポーツでもあるプロバスケットボールNBAに挑戦できる選手として、日本でとても期待されている人物です」

田渡凌選手(以下:田渡)
「高校時代は、デポルターレクラブで行うようなトレーニングを受ける機会がありませんでした。トレーニングを重ねるほど、もっとやりたい、頑張りたいと思いました。
竹下さんにお会いした第一印象は・・・、ちょっと怖いなって思いました(苦笑)」

――― アメリカのバスケットボールと日本とでは、どのような違いがありますか?

田渡:
「手の長さ、俊敏性、手を出してくるタイミングなど、さまざまな違いがあります。渡米したからこそ分かる経験は、とても貴重です」

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竹下:
「NBAは、身長2メーター級の選手がひしめき合っている世界です。身体が小さい分、スピードや、ゲームメイクの力など、日本人の繊細な感性を活かせば、オンリーワンの存在になれるチャンスがきっとあると思います」

――― 具体的に、目指している選手はいますか?

田渡:
「クリスポール選手です。183センチと、アメリカでは小柄な方ですが、逆にそれを活かしてスペースを作り、身体能力も高い。
祖父が61歳のときに事件で亡くした際、直後の試合で61点を挙げたという逸話もあります。人間的にも惹かれています」

――― アメリカで自信を持って戦うために必要なこととは?

田渡:
「当然、バスケットの技術は皆、相当高いですから、自分の持ち味をだすために、人と違うところで目立つ必要があります。
中学時代から日本代表に選出され、毎日、一生懸命練習してきましたが、高校2年で選ばれた代表試合で成果をだせず、練習でもっと頑張らないと試合で活躍できないことを学びました。
その後は、どんな小さなトレーニングでも真剣に捉え、アピールを重ねたことで、スターティングメンバーに残ることができました。私は逆境の方が伸びる方なので、もっと極限まで追い込めるアメリカ行きを選びました」

竹下:
「僕がある人から聞いた話なのですが、ダンクコンテストに出て、観衆の手拍子を誘い、気持ちを盛り上げ、会場の期待が最高潮になり、「ダンクか?!」というところで、普通のレイアップシュートをしたという・・・(笑)。そういうエピソードを聞きました。
選手も観客も楽しませることのできるスター性というか、度量があると思いますね。アメリカでスター選手になるためには、スター性も重要です」

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――― 今後のライフタイムプランは?

田渡:
「4年で大学を卒業したら、やはりNBAで活躍したいですね。
NBAはアメリカのみならず世界で放映されるほど、人気もレベルも高く、世界トップリーグです。自分のプレーを、たくさんの人に観てもらいたいし、人々の歓声の中で、最高のプレーがしたい」

――― 海外で活躍する彼に、今後、必要なトレーニングとは?

竹下:
「スピードとパワー、そしてゲームコントロール能力を高め、さらに、司令塔としての能力を磨くことだと思います。
スピードの向上には、神経系のトレーニング(アジリティ)を中心に。それに加えて、コアトレーニング(ボディバランス)や筋肉量をあげ、あたりに負けないパワーを上げていくことが必要です。
高校生の頃は今より体重が5〜6キロ少なく、ほっそりした印象でしたが、身体もできてきましたね」

田渡:
「体重は増えましたが、スピードはむしろ上がっているくらいです」

竹下:
「大学時代では、82〜3キロをキープしつつ、コート内でのスピードを高め、ボディバランスなどがコントロールできれば、アメリカでも簡単にはふっ飛ばされないんじゃないかな。
彼ならきっとやれると思います」

――― 多感な大学時代にやっておくべき課題とは?

竹下:
「フィジカルトレーニングについては、十分にわかっていると思うので、後は、実際に、高いレベルの相手と戦いながら強くしていくことですね」

田渡:
「はい。海外で、実際の身体のぶつかりに慣れたいと思います。独特の間合いや、どれくらいでシュートをブロックされるかなど、実戦でしかつかめないですし」

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竹下:
「同じように格闘技でも、強い相手との対戦経験がなく、本番でいきなり強い相手にあたると、「圧力」「スピード」「パワー」に驚いてしまいます。大学の4年間にしっかり揉まれることで、ベースができている身体能力が、さらにブラッシュアップされるでしょう」

――― アスリートとしての成功だけでなく、人間としての成長も?

田渡:
「僕が強くなることで、後輩の中にも「アメリカに行きたい」と願う選手が現れ、日本のバスケット界に貢献できる、影響力のある選手になりたい。
アメリカでは孤独も感じますが、それも、自分のため。4年間、いろいろあるでしょうが、すべてを楽しんで取り組みたいです」

竹下:
「彼は、すごく素直。デポルターレクラブのスタッフも、みんな彼のことが大好き。
やはり、人から好かれる人でないと、競技を終えてからも幸せになれない気がします。「彼のためにこうしたい」、「彼にこうなって欲しい」と賛同される資質をもっているので、アスリートとしてだけでなく、人間としての成長も期待しています」

田渡:
「日々、感謝しながら、毎日、一生懸命。
アメリカでは、高校よりも大学の方が練習量もあがる。今よりもワンステップ努力しないと追いつけない。その後、プロリーグでやるなら、なおさら。
バスケットが上手いから渡米するのではなく、うまくなりたいから、アメリカに行く・・・。常に、挑戦する気持ちです」

――― 最後に、メッセージを・・・。

竹下:
「田渡選手の、「素直で、まわりが応援してくれる」良さを大事にしてほしい。
また、日本人では太刀打ちできないといわれがちなアメリカのバスケットボールで、孤独にもなるだろうけれども、それに打ち勝って欲しい。自ら、その環境に飛び込むからには、覚悟しているでしょう。
同じ人間だからこそ、身長やジャンプ力がちがっても、勝てるポイントは必ずあると思う。
来年、再来年、ディビジョンワンのアメリカの大学でスターティングメンバーとして活躍している姿を見たいですね。」

田渡:
「バスケットで成長しているところを見せるだけでなく、人間的にも成長できるよう、毎日を無駄にせずに生きていこうと思っています。これからも、応援、よろしくお願いします!」

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Location: 美竹公園 ジョーダンコートJanuary 2013
Photo: Takeshi IjimaEditor: Takako Noma