Interview vol.14
唐川侑己×竹下雄真

センスあふれる今のスタイルに"荒々しさ"を搭載できれば世界を代表するピッチャーになれる。

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唐川侑己(からかわ・ゆうき)1989年7月5日千葉県出身。成田高時代は2年春と3年春に甲子園を経験。大阪桐蔭高の中田翔、仙台育英高の佐藤由規とともに高校ビッグ3と呼ばれ、2007年にドラフト1位で千葉ロッテマリーンズ入団。1年目の2008年から1軍で頭角を現し、5勝を挙げる。2011年に初の2ケタ勝利を挙げ、2013年はチームトップタイの9勝を挙げ、チームで唯一規定投球回をクリアした。キレのあるストレートとスライダー、チェンジアップ、カーブで巧みに緩急をつける投球スタイルで、今シーズンはマリーンズの右のエースとして君臨する。

竹下雄真(以下:竹下):
まずは昨シーズンを振り返ると、成績は9勝11敗でした。そこについてはどう考えていますか。

唐川侑己(以下:唐川):
一昨年にケガをしたこともあり、2013年の目標は1年間投げ続けることでした。それには最低限クリアしたと思いますが、やっぱり、負けたら面白くない。勝つことにすごく苦労させられた1年でした。試合の中で自分をコントロールできないまま、打たれて終わる。そんなパターンが多かった。悪くても悪いなりに修正できればいいのですが、それがなかなかハマらないというか…。例えば調子が悪い日でも、1球でも頼れるボールがあればどうにかなる。でも、それを見つけられる回数が少なかったですね。以前はアウトコースの出し入れで打ち取れましたが、今はインコースを使えないと勝てなくなってきています。また、昨年は若いキャッチャーと組むことも多かったので、頭を使わないといけない。そこも苦労しましたね。ピッチングの組み立てはバッテリーの共同作業ですからね。いずれにしても、課題の多く見つかったシーズンでした。

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竹下 :
ウチでトレーニングするようになったのは、昨年のシーズンオフでしたね。

唐川 :
環境を変えてもう一度しっかり取り組みたいという気持ちがあり、人を介してデポルターレさんを紹介してもらいました。

竹下 :
ウチに来た時のことはよく覚えています。唐川投手は、とにかく見た目がカッコいい。マウンドに行く感じや降りる感じが、21世紀のプロ野球選手というか…。僕が子供のころにテレビでよく見ていた、いかつい見た目のピッチャー達とはぜんぜん違う(笑)。年齢的にもまだまだ若く、選手としての成熟期にこれから入っていくところ。トレーニングを見た時も、センスのかたまりだと思いましたね。何をやっても形がきれいで。

唐川 :
ははは(笑)。そうですか!?

竹下 :
マウンドに立っている姿も、すごくきれいなんですよね。

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唐川 :
ありがとうございます。

竹下 :
テレビで見ていた通りでした。ところで、このオフのトレーニングにはもともと、どんな意図を持っていたのですか。

唐川 :
これは毎年ですが、まずケガをしないことですね。そして、身体の"芯"の部分の力をつけたかった。強いエネルギーを出すためのベースとなる力というか…。

竹下 :
体調面でいえば、昨シーズンはコンディションがあまりよくなかったと聞いていたので、そこはしっかり整えたつもりです。骨盤と胸骨のアライメントをよくして可動域を出し、上体がしっかり回旋することを意識。あとは、肩のインナーマッスルの強化にも取り組みました。

唐川 :
肩と肘を気にしていただき、インナーマッスルの強化も積極的にできたことで、とてもスムーズにキャンプに入れました。上体がすごく柔らかくなり、可動域が広がった実感がはっきりとあります。

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竹下 :
先ほども言いましたけど、唐川投手はセンスのかたまり。どんなスポーツをしても、たぶん成功していると思います。トレーニングも教えたらすぐにできてしまう。僕が考えていたのが、そこに荒々しさを加えることでした。センスにあふれた動きの中に爆発力をプラスする。"センスのある荒々しさ"を持ったピッチャーになれたら、怖いものはない。

唐川 :
ジャンプ系トレーニングを結構やりましたよね。

竹下 :
踏み込みを強くすることを意識しました。唐川投手は何をしても形がきれいだから、踏み込みも「すっ」といく。そこが「グン!」といくようになってほしくて…イメージの話で難しいのですが。

唐川 :
わかります。TRXを使ったトレーニングなどで、跳躍力はかなり伸びたと思います。

竹下 :
投げる時のストライドが変わらないとすれば、より高くジャンプできるようになる分、踏み込みは強くなる。骨盤のしっかりした回旋と、上体のしなりが上手く組み合わされば、確実に強いボールが投げられるようになる。もしくは力を抑えても、以前と同じレベルのボールがいくはずです。あとはフォームの微調整ができればいい。ちなみに、今の体重はどれぐらいですか。

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唐川 :
80kgぐらいですね。オフの間はずっと78kgぐらいで、キャンプの間で2kgほど増えました。ベストは78〜80kgぐらいです。

竹下 :
2kg、ほぼ筋肉で増えていますね。オフの間は体脂肪が少し落ち、筋力は上がった。その分、脂肪と筋肉が入れ替わったところはありますが、唐川投手の場合、今は5kg、10kgとビルドアップする必要はない。今シーズンは78〜80kgでいくべきで、増えても減ってもいけないと思っています。そこはしっかり見ておいてほしいですね。昨年あまり調子が上がらなかったのに、それでも9勝できるピッチャーなので、状態をよくすればその分、成績は出るはず。

唐川 :
今年はキャンプからシーズンインにかけて、それなりにいい状態にあると思っています。いける感触は十分あります。

竹下 :
3月に行われた広島とのオープン戦を見させてもらいました。広島の前田健太投手と投げ合った試合で、前田投手はコンスタントに140km台を出すのですが、唐川投手は130km台半ばぐらい。でも、僕はボールの違いをまったく感じなかった。スピードガンで計測した数値に表れない、伸びとキレがある。

唐川 :
ありがとうございます。そう言っていただけるのは、すごくうれしいです。球速表示は気になるので、自分でもよく見てしまうんですよね。

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竹下 :
昨年は自分のいいボールを絞れなかった、とのことですが、今年はどんなボールを核にピッチングを組み立てることを考えていますか。唐川投手にはもともと、どんなボールもいいイメージがあります。

唐川 :
バランスよく攻めるのは、常に意識していることです。その中でまっすぐの強さがもっとほしいと思い、フィジカルトレーニングとピッチング練習に取り組んできました。今年はインコースにたくさん投げます。内角にどんどん突っ込んでいくことで、印象が変わってくるはずなので。

竹下 :
ちなみに、シーズン中の登板から登板までのスケジュールはどのようになっていますか。

唐川 :
登板翌日は軽いジョグと、可動域を戻すためにストレッチや軽いトレーニング。その翌日は休養ですね。登板3日後から徐々にランニングやウエイトトレーニングを入れて、登板2日前にブルペンに入って50〜60球目安で投げる。そんな感じです。基本的な流れはずっと同じで、今年も変えません。

竹下 :
例えば登板翌日、翌々日などに、アクティブレストとしてホットヨガを取り入れても面白いかな、と思います。ストレッチ効果もあるし、汗をたくさんかけば疲労物質も出ていくので。

唐川 :
少しやってみたことがありますが、ヨガはいいですね。

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竹下 :
前回の投球を振り返って頭の整理もできるし、心と身体を休ませる、という意味で、ローテーションピッチャーにすごくいいと思います。そういったことも踏まえて、今シーズンの目標はどのような感じですか。

唐川 :
まずは1年間しっかり投げ切ること。2ケタ勝って貯金を作ることですね。あとは昨年の投球回数が168イニングだったのですが、これを180以上に伸ばしたいですね。そして、とにかくいいピッチングをして勝つことです。

竹下 :
日本を代表するピッチャーになってほしいし、なれるはず。そうなれれば、それは世界を代表するピッチャーということですからね。そして唐川投手みたいなカッコいい選手がいい成績を残せば、野球ファンは必ず増えると思うんですよ。

唐川 :
ありがとうございます。頑張ります。

竹下 :
ルックスだけでなく、マウンド上などの佇まいも含めたカッコよさですよね。これは教えてできるものではない。唐川投手は、一流の人だけが持つ雰囲気を持っている数少ない選手の一人。大いに期待しています!

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Location: QVCマリンフィールドApril 2014
Photo: Takeshi IjimaEditor: Naruhiko Maeda