Interview vol.18
MITOMI TOKOTO×竹下雄真

「こんなふうになりたい!」と、女の子から憧れられる存在で居続けることは、とても大変。 だからこそ、ダンサーの子たちはいつでも「ひとに見られている」という意識を持って、トレーニングを頑張っているんです。

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DJ MITOMI TOKOTO、音楽プロデューサー、リミクサー。さらに、人気クラブ系ウェブサイト「CYBERJAPAN」のプロデューサーでもあり、数々のイベント オーガナイズも手掛ける。国内を始め、ヨーロッパ、アジアなど海外プレイも多数。
日本人として唯一、4曲をBeatport ランキング TOP 100 にランクインさせ、David Guettaなど数多くの海外アーティストのリミックスを手がける。
日本国内においても、DAISHI DANCE、倖田來未、金原千恵子、Ms.OOJA、m-flo、Che'Nelle、ナオト・インティライミ、GACKTなどのリミックスを手がける。

竹下雄真(以下:竹下):
ミトミさんから「エクササイズのDVDを作りたい」と声をかけられたのは、2014年12月でしたね。

Mitomi Tokoto(以下:Mitomi):
あるプロジェクトでディスコ音楽を探していたとき、たまたま、YouTubeで80年代のエアロビクスの映像を見つけたんです。真っ赤なハイレグを着た女性たちと、ピチピチのウエアを着た男性たちがエアロビを踊っている動画です。普通なら、お笑いになってしまうかもしれないけれど、僕は、「これはイケる!」と、直感的にひらめいた。僕がプロデュースしたCyberjapan Dancersにぴったりだって。

竹下 :
「こんな感じのエクササイズDVDを作りたい」と相談を受け、見せていただいたのがEric Prydzの「Call on Me」。露出の高いレオタードで女性たちが踊っている、プロモーションビデオでした。びっくりしたけれど、僕も「おもしろい!」と感じましたよ。

Mitomi:
いま、日本ではたくさんのエクササイズDVDが発売されていますよね。でも、どれもみんな硬いイメージ。確かに、トレーニングの効果はあるかもしれないけれど、もっと柔らかくて、エンターテインメントの要素を含ませたものがあってもいいんじゃないかって思ったんです。そういうエンターテインメントの要素としては、エアロビのファッションやインパクトは最高でした。

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竹下 :
エアロビが全盛だったのは80年代。当時、子どもだった僕らにとっては、アニメ「ドラゴンボール」で亀仙人が鼻血を出しながらエアロビの番組を見ているという印象が強くて(笑)、僕自身、昔から興味があったんです。その後、時代とともにエアロビは下火になってしまったけれど、この雰囲気をまじめにリバイバルしたらおもしろいんじゃないかって思いました。

Mitomi:
とはいっても、80年代のエアロビはあくまでもモチーフ。音楽とトレーニングは、きちんと本質を踏まえた最新のものを使いたい。音楽は僕が監修するとして、まず悩んだのは、どこにエクササイズの監修をお願いするか、ということでした。そこで、Cyberjapan Dancersのメンバーに「こんなエクササイズDVDを作りたいんだけど、誰か、ジムやトレーナーを知りませんか」と尋ねたんです。そうしたら、リーダーのユリサが、「私がトレーニングを受けているデポルターレクラブさんを紹介しますよ」と。それが、始まりでしたね。

竹下 :
音楽はミトミさんが担当し、エクササイズは僕たちが監修する。僕らにとっても、こんなコラボレーションは初めてだったので、とてもわくわくしながら仕事をさせてもらいました。DVDのなかで実際にエクササイズを行うのは、Cyberjapan Dancersのメンバーたちですが、最初、「こういうDVDを制作したい」と提案したとき、彼女たちの反応はどうだったんですか。

Mitomi:
「え〜〜っ!」と、不満そうでした(笑) でも、ユリサだけは「おもしろそう!」と言ってくれたんです。彼女はリーダーとして、僕が考えていることをちゃんと把握してくれているから。

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竹下 :
エクササイズの名前は「SEXYSIZE(セクシサイズ)」。EDM(Electric Dance Music) のヒットナンバーに合わせて楽しく踊るだけで、Cyberjapan Dancersのような、セクシーなボディラインが手に入るというコンセプトも、新しいなと思いました。音楽について、なにかエクササイズ向けにアレンジした点はあるんですか?

Mitomi:
もともと、僕らが扱っているEDMは、実はエクササイズにぴったりだと思うんですよ。通常、EDMはビートのない「ブレイク」と、いわゆるサビの部分の「ドロップ」という2パートに分けられます。このメリハリがエクササイズにぴったりだと思ったので、あえて、今回は「エクササイズ用」というアレンジは加えませんでした。

竹下 :
だけど、今回はメジャーな音楽をたくさん使っていますから、ひとつずつ許諾を取るのが、とても大変そうでしたね。ミトミさんがそういう作業をしている間に、僕らはエクササイズのベースを制作。まず、女性が気になりやすい体のパートを5つ、ピックアップしました。バスト、ヒップ、お腹、背中、脚の5つです。

Mitomi:
そういえば、日本人は女性の胸に、美しさやセクシーさを見るそうですね(笑) 僕はフランス人と日本人のハーフなのですが、ヨーロッパのひとはお尻を見るのが一般的です(笑)

竹下 :
なるほど、国によってそんな違いがあるんですね(笑) でも、いずれにしてもどこか1ヵ所だけ鍛えても、全身のバランスが悪かったら意味がない。だから、今回の「SEXYSIZE」ではひとつのエクササイズを約5分とし、1パートずつ集中してトレーニングしていくというスタイルを取りました。すべてのエクササイズを行うと、全身を鍛えられるという仕組みです。

Mitomi:
僕はまだ、実際に「SEXYSIZE」をしていないのですが、かなり本格的な内容みたいですね。収録のためにトレーニングを続けるうち、ダンサーたちの体がめきめき変わっていくのがわかりましたよ。DVDの収録が終わったあとは、筋肉痛でダウンしている子もいるほどでした。

竹下 :
トレーニングに手加減はありませんから(笑) もともと、僕らには最先端のトレーニングのノウハウがある。今回は、女性向けにワークアウトやピラティス、ヨガなど、さまざまな要素をピックアップしたあと、ユリサさんに、セクシーになるためのアレンジを加えてもらったんです。エクササイズのベースは変わらなくても、表情とか、腰の動きとか、見せ方にちょっと気をつけるだけで、ぐんと効果が変わるんですよね。どれだけすぐれたトレーニングでも、アスリートのようにガツガツ鍛えていただけでは、女性らしいボディラインにはなれない。さすが、ダンスのプロだと、僕らも勉強になりました。

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Mitomi:
彼女たちは、普段から「見られる」のが仕事だから。3時間、ハイヒールを履いてステージで踊り続けるって、想像以上にハードなことだと思うんですよ。クラブで踊っていると言うと、周りから軽く見られそうだけど、実際はものすごくシビアな世界。みんな、ステージを終えて控え室に帰ってくると、ぐったりしていますよ。だけど、ステージの上ではいつも笑顔。そして、お客さんも笑顔にする。これが、彼女たちのプロ意識だと思うんです。

竹下 :
「見られる」という意識は、とても大事ですよね。うちのクラブにも女優やモデルの会員さんが多くいらっしゃるけれど、みんな、普段から「見られている」という意識がとても高いんです。「見られている」ということは、ある意味、周囲から「期待されている」ということ。その期待に対して、自分がどうふるまうか。そういう意識の高さが、彼女たちをスターにしているんだなと実感しますね。

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Mitomi:
Cyberjapan Dancersの面接でも、そういう部分をとても大切にしているんですよ。言葉で表すのはとても難しいけれど、女の子たちと会って、話をすれば、この子がスターになれるかどうかってすぐにわかる。ダンスがうまいとか、スタイルがいいとか、そういうことじゃないんです。ひとの前で踊ったとき、特に、女性のお客さんから「私もこんなふうになりたい!」と憧れられる存在になれるかどうかーー。ひとを惹き付ける力は、努力だけではどうにもならない部分が大きいですからね。

竹下 :
僕も、今回一緒に仕事をして、Cyberjapan Dancersの方たちに対する目が変わったような感じがします。日本だけでなく、世界で人気を集めていて、セクシーな衣装で華やかなダンスパフォーマンスを披露しているCyberjapan Dancersだけど、メンバーは思った以上にストイックで、健康的。お酒を飲むひともほとんどいないし、生活習慣にも気を配っている。自分を規律して、抑制するという意味では、アスリートに近いなと思いました。

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Mitomi:
彼女たちは、決してスポーツ選手ではないけれど、トレーニングに対しては普段からとても熱心なんです。そういう日常的な努力があるからこそ、ステージ上では元気で踊れる。そして、それを見るひとも元気になって、笑顔が生まれる。僕は、そういうお客さんの笑顔が見たくて、Cyberjapan Dancersをプロデュースしたんです。

竹下 :
「ひとに見られる」と意識することって、体に対してものすごいパワーを与えるんじゃないかと思うんです。たとえば、格闘家が控え室を出て、花道を歩いてリングに向かうとき、だんだん筋肉が隆々として、背中が大きく見えるんですよね。無意識のうちに、体が視線に反応しているんです。もちろんスポーツ選手だけじゃなく、一般のひとでもそう。結婚式を間近に控えた女性は日に日に輝いてきますから、美しさやセクシーさを表現するコツは、まず、「見られている」と意識することなんじゃないかなと思います。今回の「SEXISIZE」は、どんなひとにお勧めしたいですか?

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Mitomi:
ぜひ、Cyberjapan Dancersに憧れる女の子たちに使って欲しいですね。このエクササイズをすれば、ちゃんと体が変わっていくことは、Cyberjapan Dancersのメンバーを間近で見ていた私が保証します(笑) さらに、画面を見ながら、「私もこんなボディラインになりたい!」と頑張ったら、もっと効果がアップするんじゃないかな。想いの力って、とても大事ですよね。

竹下 :
確かに、想いは体を変える力を持っていますからね。その一方で、これまでフィットネスやトレーニングにまったく興味がなかった人が、Cyberjapan Dancersに憧れて、「『SEXYSIZE』を始めてみよう!」と思うかもしれない。彼女たちにとって、新しい世界のとびらが開いたという点でも、充分、価値があるDVDになるのでは、と思います。今後の動向次第ですが、ぜひまた続編を企画したいですね。

Location: agehaJuly 2015
Photo: Yoshiki HaseEditor: Hiroko Suzuki